大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1341号 判決

控訴人訴訟代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、被控訴人代理人において、「本件土地は訴外板橋権右衛門、同芳造を経て同藤一郎に順次家督相続に因りその所有権が移転せられたものである。控訴人主張の賃貸借の合意解除は否認する。」と述べ、控訴人訴訟代理人において「仮りに本件土地百七十坪一合五勺が罹災建物の敷地であつたとしても、昭和二十二年五月頃当時の所有者(賃貸人)板橋藤一郎と被控訴人間に、賃貸借契約解除の合意成立したものである。」と述べた外は、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

被控訴会社が昭和十四年五月一日、訴外板橋権右衛門からその所有に係る東京都板橋区志村清水町二百九十七番地、二百九十八番地、二百九十九番地に跨る土地千三百三十坪をその主張の約旨で賃借し、右地上に住宅工場を所有してきたところ、昭和二十年四月十三日右建物は戦災に因つて全部焼失した事実は、成立に争のない甲第一、二号証、原審及び当審証人板橋藤一郎、同渋谷利寿の各証言によつてこれを認め得べく、前記土地の所有権が板橋権右衛門から同芳造に、更に藤一郎に順次家督相続に因り移転したことは、前顕板橋藤一郎の証言によつて明らかである。

次に控訴人が昭和二十三年五月二十九日、前記藤一郎から前記土地千三百三十坪の中二百九十八番地の二宅地百七十坪一合五勺を買受け、その所有権取得登記を経て現にこの土地を占有していることは、当事者間に争がない。

よつて右土地百七十坪一合五勺が、罹災建物の敷地として使用されてきたかどうかを検討するに、原審証人山根高之進、同菊田始、同渋谷利寿、当審証人菊田始、同渋谷利寿、同高橋義雄の各証言及び右高橋の証言によりその成立を認める甲第三号証を総合すると、前記被控訴会社の賃借土地全部千三百三十坪は数番地に跨つているが、個々の土地については何等の区切りなく、その全部の土地の周囲に板塀を設けて一区劃をなし、その中約四、五百坪の地上に工場、事務所、住宅等五棟位が建設せられ、空地は主として材料置場として、間々家庭菜園用地として使用せられ、本件控訴人が買受けた部分百七十坪余はこの材料置場として使用せられていた部分に該当することが認められる。前記各証人の供述中右認定に反する部分は採用し難い。そして右認定事実によれば、本件係争土地の上には建物は存在しなかつたけれども、この土地も罹災した工場その他の建物に従属して使用されていたものであつて、前記賃借土地全部千三百三十坪の一部として一括して罹災建物の敷地をなしていたものと認めるのが相当である。

してみると被控訴人は、借地借家臨時処理法第十条により本件土地につき罹災建物が滅失した当時から引続きその敷地に借地権を有する者として、その借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくても、この賃借権を以て昭和二十一年七月一日から五年以内にその土地について権利を取得した第三者である控訴人に対抗し得る筋合である。

控訴人は、昭和二十二年五月頃当時右土地の所有者で且つ賃貸人であつた訴外板橋藤一郎と被控訴会社との間に、前記賃貸借解除の合意成立した旨抗弁するけれども、当審証人板橋藤一郎の証言その他控訴人の提出援用にかかる全立証を以てするも、到底これを肯認するに足らないから、右抗弁は採用しない。

よつて控訴人に対し前記賃借権に基き本件土地の引渡を求める被控訴人の本訴請求は、正当であるからこれを認容すべきものであつて、これと同趣旨に出でた原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条に則り本件控訴を棄却すべく、控訴費用につき同法第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤直一 菅野次郎 坂本謁夫)

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